父親が居ないこと
帰広することが、去年の今頃はたった一つの希望の光だった。
帰って何が待っているわけでもなかった、仕事がある保証もなかった。
ただ、東京にいる意味はもはや、何一つなかった。
1年後の今年の夏休み、みいなが1年生の時から続けている、夏休み中、International schoolのsummer course に行かせること、を実行するため、過去2年連続行かせていた
International schoolへ連絡をした。
去年の話だ。
去年は、1年生になったばかりのあいこも一緒に二人そろって行かせるため、文京区の学校を探し、summer courseに申し込んだ。1週間と2週間コースがあり、値段も高いため、迷い、早漏元夫になんどか意見を求めたけれど、ほとんど無関心だったな。
それもそうだ、蒸発する直前だった。
私はそんなこと知る由もなく、2週間のコースを二人分申し込み、計14万円支払った。
そして元夫は私達を捨てて消えた。
私は生活が不安になり、引っ越しをしたり、学童を辞めたり、出来る限りの節約対策をした。そして、このsummer courseをキャンセルすべく、学校に連絡したが、一切キャンセルに応じないという。地獄に突き落とされたショックでパニック状態であった私は、二人分、2週間分の計14万円を取り戻すべく、恥をさらして、夫が消えて急に生活が苦しくなったこと、だからキャンセルしたい、と伝えた。
それでも、回答はNOだった。
しかたなく、二人を通わせた。みいなとあいこは、2週間のコースは楽しく、有意義なものであったが、元夫が消えることを知っていれば、当然14万も払ってサマーコースに行かせることはしていなかった。
そんな一年前の恨めしい出来事を思い出しながら、international schoolに連絡をすると、すでに学校は閉鎖しており、先生のみが自宅に来てレッスン可能だと回答してくれた。
2日間、3時間ずつ自宅に来てもらい、英会話レッスンをお願いした。
2日目が終わって礼を言って下まで送った際、J先生は私に聞いた。
『あの子たちには父親はいるのかい?』
レッスンの様子は扉が閉まっていたので分からなかったが、どうやら、みいながべたべたとJ先生に甘えていたようだった。
「ああ、またやったのか。」
あの人生最悪の出来事の後から、みいなはパパと年が近い男性に、やたらべたべたとまとわりつくようになった。明らかに、人肌恋しいような、見る人がみれば、
「ああ、そういう事情で…」と言われかねないような。
案の定、言い当てられてしまった。
様々な子供たちに接してきたJ先生だからこそ、様子が違うことくらいお見通しなんだ。
私は、みいなの行動に対する親としての気恥ずかしさと、無意識でやるみいなへの同情と、じゃあ私がどうすればよかったのか、というやりきれない思いで苦しくなった。
何もできない。
こんな目にみいなを合わせたのは誰だ?