『Just Moved』
東京から、逃げるように引っ越してきた私達。それは、引っ越す理由を知られたくなかったから。1年半前に東京へ引っ越した時、温かく迎えてくれた新旧友達、年賀状を今年貰いっぱなしで返事を書けないでいた昔からの友達・・・
20枚程度だが、まったく事情を知らせていない友達へ、思い切って
「引っ越しました」はがきを出した。
一つ一つ、メッセージを添えて…
ある者には、『人を信じられなくなりました』と泣きごとを書いたり。
ある人には『人生何があるかわかりません』と意味深に。
『夫婦別姓の世の中を願います』など。→これは本当。
投函するとき、ドキドキした。
そして、もやもやした。なぜか?至らない妻ではあったかもしれないが、ここまで貶められるほどのことはしていない、私は間違ったことはしていないのに、なぜ惨めに思うのか・・・?名前が変わったことですぐにわかるではないか?なぜ?なぜ・・・?
離婚から3か月、引っ越しから2か月。外でMINIを見れば嫌な気持ちになり、何かと早漏元夫の影が心の中にあり、苦しんでいる。
それはたった3カ月では癒されるはずもない、仕方のないことなのに。
はがきが到着した友人たちは、驚いて電話をくれる人、LINEをくれる人、等。
特に、電話をくれたNさんは、みいなとあいこが2,3、歳だったころからを知る、昔のご近所さんであった。毎年庭の玉ねぎ収穫や、年末は餅づくりのお手伝いに呼んでもらっていた。近所に買ったマンションを売ってまで東京へ転居する私たちを、それはそれは寂しがってくれた。
みいなとあいこの様子を心配しながらも、Nさんはむしろ、この数か月、地獄の底を傷だらけになってさまよって生還した私を、心配していた。
言葉では聞かなくても、声色で、私に「辛かったね」と言っていた。
それを感じた私は、明るく「大丈夫です、カープのそばで幸せで♫」と笑っていたものの、段々閉じていた扉が開いていくのを感じた。
まずい、泣いてしまう。。。
このままだと、何が起こったかすべて喋って受け止めてもらいたくなりそうだ。
あいこにわざと電話をかわってもらった。
東京を出発する前に会った、元同僚のKさんは、はがきをみて涙が出た、とLINEをくれた。同じく離婚歴のあるKとは、レストランでお互い泣きじゃくった。
経験したものでないとわからない思いを・・・
勇気を出して投函した「Just Moved」のはがき。
元気ですよと伝えるはずだったのに、なぜだか私はだんだん後ろ向きになっていった。