人生最悪の日‐地獄に突き落とされ
6月30日
この日を私は一生忘れないだろう。
それとも、これから待ち受けている素晴らしい未来のための、記念日になるのかな?
数年後はそう思いたい。
朝、私のことに興味がないとは思いながら、夫に「今日は午後健康診断なんだ。午前中でこの近くの病院に行くんだ」
夫が、珍しく、どこの病院か、何時からか、聞いてきた。
そして急に「今日朝の会議があるのを忘れていた。早く会社にって準備があるから」とみいなが「パパ今日も早い?」
「うん、いつも通りだよ」7時過ぎに早めに出社した。
普段通りの風景だった。
実は私は午前中会社にはいかず、別の会社の面接を受けていた。色々思うところがあったからだ。そして11時半ごろ帰宅。EVを降りて突き当りの自宅前を見ると、ブロックがドアの前に置いてある。あれ?こんなの朝出していなかったけど・・・?なぜ?
ドアの前に立つと、ふわっと嫌な感覚がした。
鍵が開いているとわかっていた。なぜだか。
ドアを開けると、右の靴箱の夫の靴がすべて無かった。
「え??」
部屋に目をやると、段ボールがいくつも・・・
「え?どういうこと?」狼狽しながら部屋にはいると、クローゼットは空っぽ、段ボールに残りの荷物を投げ込んであった。
夫は居ない。
「え・・うそ・・どういうこと・・・」頭が真っ白になり、夢であってほしいと祈りながらただ狼狽えていると夫が戻ってきた・・・
「帰ってたんだ・・・」
「これ、なに?どうして?」
「俺の気持ちは伝えただろう、こうするしかなかったんだ。」
「まってよ、どうすればいいの、私達・・」
「路頭に迷わすことはしない、お金は送る」
「ええ、話もしていないよ、待ってよ・・・・子供たちは・・・」
「みいなとあいこには手紙を書いた。ちなつにはあとでメールするよ」
「なんで!?東京で働きたいっていうから、すべて捨ててついてきたのに!?」
「なんでおれを広島に連れて行ったんだっ!!」
6年前、夫婦で話し合い、私の実家のある広島で子育てがしたい、と、夫に了承してもらい、広島に5年間住んでいた。
当初は仕事のストレスや、気持ちのすれ違いで危機はあった。3年前の不倫もその延長だった。それでも、困難を克服し、友達にも恵まれ、楽しく暮らしてきたのに。
今頃それを持ち出して吐き捨てるように、
夫はスーツケースを引いて、行先も告げず去ってしまった。
ベランダから下をのぞくと、ハイエースに荷物を積んでいる夫が見えた。
冷静に写メを撮った。
ここまで計画していたなんて・・・・
裏切り、嘘、一方的な別居 思いつく限りの非情な言葉が次々と空から降ってきて、私の心と全身に突き刺さる。身も心も血だらけ。
これはすべて、私が愛して結婚した夫がしたことなのか・・・?
みいなとあいこの大好きなパパなのか・・・?
なみだはすぐに出なかった・・・抜け殻のようになって、無気力のまま健康診断に行った。
母に電話をした。そして、初めて泣いた・・・
午後4時過ぎ・・・娘たちがキャッキャいいながら帰ってきた。廊下にかわいい声が響く・・・この娘たちが夫の置手紙を読み、事態を把握して、どんなに傷つくか・・・
今度はその恐怖と、一生の傷になることが、今まさにこの子達に起ころうとしてるのをわかっていながら、救ってあげられない無力感でどうしようもない怯えた母のまま、私は「おかえり」というのが精いっぱいだった。
夫婦の問題は、私の問題でもある。愛する娘たちが手紙を読み、はじめは「ん?」と二人で笑いながらヘラヘラしていたけれど、10秒後には、嗚咽を上げて泣いた。
ごめん、ママのせいでもあるんだ、でも、ママもまだ、自分たちに起きている事態を理解できないでいるんだ・・・『ママがいるから大丈夫』って、励ますことも出来なかった・・・そして、3人で、嗚咽をあげながら泣きじゃくった・・・